とけいそう
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私の名前は「むべ」です。

早春から夏は避けて、初冬の気候の良い季節だけ、朝1時間ほど原村を歩きます。
ある家の軒先に、見慣れない蔓に青々した実、大きさはキウイぐらいです。
木の札が2か所「私の名前はむべです」と吊り下げられています。
夫と「きっと何の実ですか」と通りすがりの人に聞かれるからだね。と 笑いあったのは、もう10年も前のことです。
長い夏もやっと終わり、深まる秋の朝、久しぶりに、その家の前を通ると 紫がかった薄紅色の実がたわわに実っています。
二人で見上げて、ふと見ると、あの「私の名前は〜」の木札がありません。
家人がちょうど玄関から出て来られたので、思わず「むべですの札が、ありませんねえ」と話しかけてしまいました。
「あれえ、ひとつは腐ってしもたが、 もうひとつは」ときょろきょろ「あ〜あった!この間の風でおとされたんや」 話が弾んで、美味しそうに見えるけど食べられへん。見て楽しいから。1個 あげよと頂きました。
今朝は、思いがけず10年見上げていた、珍しい「むべ」を手にできた、気持ちのいい朝でした。

記:松が丘 Y.I   


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