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私は100年早く生まれ過ぎた

 私は若いころよく「私は100年早く生まれ過ぎた」と言っていました。
100年後の世界がどんなものか想像もできませんでしたが、戦争が終わったとき私は19歳でした。
当時の女性の地位と言ったら極端な男尊女卑、女性に人権などありませんでした。結婚した友人らの話を聞くと、私には到底耐えられない世界でした。姑をはじめ婚家先での生活は我慢、我慢の連続、夫に理解があればまだしもないときは、家事全般を文句を言われながらこなし、子供を作る道具とされるそんな生活を耳にすると到底結婚などする気にはなりませんでした。それが極端な例だと今の人は思うでしょう。例外はあってもほとんどの女性はそうでした。今年配の女性に聞いてもみんな経験しているといいます。
 幸い大きな企業に勤めていて、収入に男女差はなく首の心配もなかった私は親の嘆きも聞かず結婚しませんでした。
戦争で多くの適齢期の男性を失ったこと、仕事が面白く辞めたくなかったこともあります。
多くの友人にも恵まれました。30歳で家を出て、この上ない自由な生活を満喫し、自分の思うとおりに生きてきました。42年間勤めて卒業し,予定通りの年金暮らし。高齢者住宅で暮らしています。結婚したくない男女が増えているという昨今。やはり100年早かったのです。今私に悔いがないのは事実ですが。もし幸せな結婚が出来ていたら私にも違う人生があったかもしれませんが。

2019年3月3日    
記・写真 牧戸 富美子