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沢木耕太郎著「深夜特急」を読んで

 最近、同年代の友人達から「返却不要」の本が時々回って来る。
私と同様に、本を含めて終活の必要を感じての事だと思うが、本を自分の手で処分するのは気が進まないのでは・・・と想像している。
 そんな本の中の、今まで関心があって読む機会がなかった「深夜特急」を読んだ。
「深夜特急」は沢木氏が20代の頃(現在70代)にバッグパッカーでニューデリーから、ヨーロッパ大陸の最果ての地ポルトガル、サグレス迄乗り合いバスだけを乗り継いで行った旅行記です。
この作品は帰国数年後に書かれたようで、多分メモを残していたと思う。国境近くのバス停で下ろされ、検問所迄、2キロ以上も歩き、入国が出来るかどうか不安になったりしたが、幸い拒否された事はなかったようだ。常に所持金(多分ドル)の残額を頭の中で計算して、宿泊料金や食事の料金の安い所を探した様子が詳しく書かれているのには、感心する。時には英語の苦手な宿泊施設の経営者に頼まれてバスの到着時間にバス停に行き、客引きをして宿泊代を無料にして貰ったりする。時には安いと思って行った宿泊先は一部屋に10台ぐらいベッドが並んでいてがっかりする。その部屋のベッドの一つに数日間食事にも出て行かず、寝たままの外国人がいて気になり、果物を買って来てあげるが礼も言われないので、多少腹を立てるが、数日後に元気を取り戻したのか次の目的地に向かって出発したのを見て安心する。
 旅の最終地と思っていたポルトガルの最西端の岬サグレスで、作者は民宿風なホテルに3日間滞在し、他の国になかった品格と人情深い接待を受け、ここで旅も終わるかと思わせた。しかしポルトガルのサグレスから船に乗ったものの、また旅心が湧き、スペインの各地をまわり、再び長距離バスに乗り、遂にパリにたどり着く。その直後に、たまたま、道で出会った青年に安いホテルを聞くと、自分の友人の部屋を暫くの間一緒に使わせてくれると言う。感謝して数日間パリで過ごす間、居させて貰う。再びロンドンへの長距離バスに乗り、いよいよカレーからドーバー海峡を越えて(正確には潜って)ロンドンに到着する。旅行中、もし無事にロンドンに到着したら、日本に「無事にロンドンに到着せり」と電報を打つつもりでいたので早速、郵便局に行くが、ロンドンの郵便局では「電報を扱わない。電報は電話で打って下さい。」と言われて驚いた所でこの旅行記は終わっている。実際、空ダイヤルを回したのはアルファベットに直せば「ware touchaku sezu(我到着せず)」作者の心の旅はまだ続くのかもしれない。
 世界の貿易による富を手にし、キリスト教布教の名目で訪れた国々と文化の交流を持ち、とりわけ戦国時代から日本とのつながりの深かったポルトガル。私と妹も体力のある間にポルトガルに行きたいと思案中です。

2018年12月29日    
記・写真山田 昭子     
夜の太陽の塔