我が家の小話 三話
(その一) ある日二階の窓ガラスに風で枝がぶち当たったような音がした。二階で主人が物を落としたかと尋ねたが何もしなかったと言う。庭を見ると何と小鳥がひっくり返っている。慌てて庭に出て手に乗せると可愛いメジロがガチガチになっている。どこが心臓かお腹かも判らず、やたらと心臓らしきところをマッサージして、細い足をゆっくり伸ばした。次に嘴に細い水道水を掛けると足を伸ばしだしたのでほっとしていたら急に飛び回って室内を飛び回る。脳震盪を起こしていた模様。今度は室内でまた内側からガラス戸にぶつかりそう。虫取り網で追いかけて外に放り出した。その間約40分、メジロが大空に舞い上がった途端、辺りが静寂になり、気が付けば先ほどの騒ぎは親鳥が鳴き続けていたらしい。親の深い愛情が感じられた一瞬だった。 人助けならぬ鳥助け。か弱さはしばらく私の手のひらに残った。
(その二) 友人のパステル画展の案内状頼りに主人と戎橋の会場にでかけた。当日は天気の良い日曜日とあって難波駅周辺の人通りの多さに驚いた。昔良く知った所と高を括って、いい加減に地下道を上がったが道筋が解らなくなった。 最近外国の観光客が多くなったと聞くがどなたが外国人か日本人かわからない程慣れた感じ。私たちの方が外国人のよう、明らかに日本の方と思しき人に戎橋筋を尋ねた次第。眼の前に水掛不動が現われたのでほっとした。お礼にお賽銭と水のひとかけ。その周辺はご存知の石畳の路地沿いに飲食店が並ぶ法善寺横丁です。 "包丁一本晒しに巻いて・・・♪"お蔭で目的の会場には無事着いた。 お上りさんになったねとトホホ〜
(その三) 友人から「ムベ」の果実を戴いた。アケビの一種で、アケビより少し小さく、赤紫色が濃い。
私には百人一首から思いだすのは「吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風をあらしといふらむ」。その中の「むべ」の意は「なるほど」とある。 調べると「ムベの果実」と古語「むべ」が関係すると分かりびっくりした。 西暦670年前後に在位した天智天皇が近江の蒲生野へ狩りに出かけた時、8人の男子を持つ老夫婦に出会い、天皇が「汝ら如何にかく長寿ぞ」と尋ねると「この地で取れる霊果を食する為」と答えた。それに感心して「むべなるかな(なるほどの意)」と得心し、その後この果実を「ムベ」と呼ぶようになったとか。ムベを郁子と書くのはわからない。ちなみに余計なことだが、この和歌は「山」と「風」を合わせて「嵐」といい、「嵐」を「荒らし」と掛けての遊び歌。 VG槻輪の四季彩に投稿し始めて、日本語の面白さを感じられるこの頃だ。 2018年11月19日 |