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私の幻覚体験

 「腰椎椎間孔狭窄症」で手術を受けました。
背骨の間に神経が当たって、足が痛くて歩けなくなったからです。
当日午後1時30分に手術室に入りました。仰向けに寝て顔にマスクを当てられて直ぐ意識はなくなりました。
 声を掛けられて眼を開きました。
丁度私の顔の向いているところに時計があり、7時を指しています。
そのとき何故か私の意識ははっきりしていて手術の予定は腰椎の2か所を手術して、約4時間と聞いていたので、5時間半経っていると思いました。
それからうとうとして午後9時ごろまでは何も覚えていません。

 そのころから夢というか幻覚というか、私の頭の中につぎつぎにいろんな映像が現れはじめました。
 まず最初はギリシャの裁判のゲームです。
映画の「クレオパトラ」や「テルマロエ」のようなドレープの入った衣装を着た人が、パルテノン神殿のような石柱の並んだ建物の中庭のような広場におおぜい立っています。
そして裁かれる人の名前がカタカナで現れます。その名前を私は必死に覚えようとしましたが、覚えていません。
その中の2人が裁判で争うのです。内容も何もわかりません。
私がどちらかの勝ちをマウスで決めます。
合っていればその人の画がすっと上に出ます。
次の二人が出てきて勝負します。
5組ほど済むと1ゲームが終わります。
また次ぎも同じようなゲームの繰り返しが際限なくつづきます。
 私が飽いてきてやめようと思うとその映像は出なくなりました。
そんなゲームは今まで見たことはありません。

 次ぎはお坊さんが出て来ました。
1人は入院する2.3日前にテレビで見た、地獄、極楽を始めて言い出した人だとか、そのときの「源信」という人の肖像画です。
もう1人、墨染めの衣の立ち姿の僧侶の絵も出て来ました。
次に見たのは私のベットの周囲に5.6人の人が私を覗き込むようにして立っています。
丁度ドラマの「ご臨終です」というときの状況です。
しかし私の知っている人は1人もいません。
その後そんな場面は何回も出ました。
2人だったり3人だったりしました。
お坊さんだったり、ご臨終だったり、後で思うと縁起でもないと思うところですが、そのときは何とも思いませんでした。
今回の手術は主治医のお話でも命にかかわるような手術ではないし、私は弟にもしもこの手術で万一のことがあっても私はむしろありがたいと思うと話していたので命の心配は全然していなかったのに、私の深い心の底ではやっぱり命のことを思っていたのかと不思議に思いました。
どうせなら私の好きな閻魔様に出て来てもらって私の人生の評価を聞きたかったなあ。
もう一つ不思議だったのは、半日ほど敬語が全く使えなかったことです。
頭の中では言葉が浮かんでいるのに口から出るのは「いらない」「ほしい」だけです。
しかも間違ったことは言ってません。
薬が効いていたと思われる約1日の間、いろんな夢を見ましたが、現れている現象以外は私の意識ははっきりしていました。
夢の中でもその現象をやめようと思えばやめられるのです。
この話しを人にしたいと思っていました。
今までっ全身麻酔の手術をした人から幻覚の話しは聞いたことがなかったので、自分ではとても貴重な体験だったと思います。

 「VG槻輪」のみなさま、大変ご心配をおかけしました。
もうすっかり痛みはなくなりました。
元気にしています。
長く歩くのは少々無理ですが。
日にちが解決してくれると信じています。
ありがとうございました。

2017-08-20      記 牧戸 富美子