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熊野古道伊勢路第12回 その2
温泉巡りと熊野参詣の御利益



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 温泉宿泊の朝の恵みは眼が覚めるなり温泉に浸れること、至上の幸せを感じる。この朝も昨夜と趣の違う玄武洞の湯に入る。二度の入浴で美容と健康の御利益を入口にある温泉の守り神の祠に手を合わせる。全長154m、5分45秒の長い長いエスカレーターでいく山上館から美しい熊野灘を望む。今日の参拝は熊野那智大社から始まる。那智大滝に対する原始の自然崇拝とする神社であり、神武天皇が日向からこの地に来たのは3本足の八咫烏(やたがらす)が導いたとは誰もが知るところだ。現代人には日本サッカー協会のシンボルと言った方が良いだろうか。サッカーを日本に紹介し、サッカーの神様のように親しまれた中村覚之助の出身が勝浦で、近くの渚の宮神社のシンボルから来たと言われる。ちなみに「咫」とは長さの単位で約18cm、"大きな"という意味。大きいとか3本の手足って便利だろう。467段の階段を喘ぎ喘ぎ登った甲斐あって、那智の滝とその横にある青岸渡寺の美しい景色にまたまた手を合わす。青岸渡寺は西国三十三所一番札所でもある。
 世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」として神仏習合の過程で三山と青岸渡寺も海岸近くにある補陀落山寺(ふだらくさんじ)も含まれている。補陀落信仰とは補陀落(観音様のおいでになる浄土)を願い、充分な食料も水も持たず、小さな舟で荒海に出て行く捨て身行の一種であったという。三山目の熊野本宮大社では旅行社が正式参拝をセッティングしてあり、本殿・本尊の前で禰宜のお祓いを受け、身も心も清められるという。家内安全、健康、就活、受験の願いは境内の端にある一番小さなお社のヤオヨロズの神に祈る。何しろ辺り一面神様だらけである。三山を参詣したご利益が早速表れた。同行していた義妹が境内で財布を落し、戻ると拾ってくれた人がいた。ありがたや!ありがたや!
 この2日目のもう一つの目玉コースは棚田の枚数では日本一とする丸山千枚田を見られると云う事だ。高低差200mの山中に登ると登山者一同眼下に1340枚の棚田が広がる絶景に感嘆の声を上げる。400年前の検地では2240枚だったのが約500枚に減り、地元が立ちあがり、現在1/2がオーナー、1/4が公社、1/4が1口三万円のオーナー制度で復活してきたそうだ。みなさん、いつでも申し出て下さいと語り部に勧められる。棚田1枚1枚が銀色に輝いている。まさに銀シャリの美味しいお米が収穫できるのだろう。収穫率は1/3、価格は4−5倍とか。背を向けた山から清い伏流水が極く少しの高低差を付けた棚田を滑り落ちて来る。最小3株の棚田は落差の為、絶対必要な存在という。まさに人間の知恵と努力がなせる歴史遺産である。山死ねば海死ぬ。海死ねば人間死ぬと現地の言い伝えがあると教えてもらう。熊野古道伊勢路12回完歩で山も海も田も祈りも人間の努力で明日があると実感した。1年前の鎮痛剤なしでは参加出来なかった私が健康を喜び、歩く事の楽しみを見つけ、語り部から知識を得、参加者のマナーを知る・・・全て感謝の気持ちで一杯であった。いやこれが最後ではない。次の新たな挑戦を探したい。

2015年4月22日    
上村 サト子    

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