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熊野古道伊勢路11回 その1
「松本峠を越せば熊野本山へあと一歩」



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 熊野古道伊勢からの参詣道も今回の松本峠を越せば、ただ一途、古人にとっては殆ど満願成就に近い思いで、歩を速めた事であろう。三重県の南端の尾鷲市を過ぎ、熊野市に入って、大泊海岸でバス下車。夏の花火大会には17万人の人が訪れると語り部さんは自慢する。きっと太平洋を背に打ち上がる花火は豪快であろう。今日の語り部さんは御夫婦で、夫々約20人のグループを担当される。山に入っている間、夫婦喧嘩しないからと冗談を言われ、幸せそう。
 松本峠は高低差135mでちょっと甘くみていたが、食後準備運動をしただけで、登りはじめたので、1段1段がきつい。江戸時代の美しい石畳は苔むして自然と歴史を感じさせてくれる。しばらく登ると石畳の図柄と言おうか石目といおうか、勝手の違う所がある。語り部さんの説明では漁師と網元が刃傷沙汰を起こす程の喧嘩をし、奉行所はお仕置きの変わりにこの山道の整備を申しつけたとか。粋な有益な裁きだ。峠に着くと崖の上に人間の背丈ほどのお地蔵さんがすくっと立ち、旅人を見守っている。鉄砲名人がタヌキの化け物と思い、鉄砲を打ちこんだという傷が左の裾の下にある。展望台から日本渚百選に選ばれた七里御浜(しちりみはま)が見事に見渡せる。この浜は速玉大社のある新宮まで西に25k続く。東の海岸には多娥丸(たがまる)という海賊が住み着いた鬼ケ城という崖っぷちが見える。この海岸線のあちこちに奇岩・巨岩があり、夫々に神様がいたり、伝説が生まれやすい土地らしい。峠を下るとそのまま熊野市の街中に入る。鉄砲火薬店やレトロな家屋の土産店やあちこちにお雛様の展示等で観光客を楽しませてくれる。市中にある笛吹き橋は平安時代に征夷大将軍・坂上田村麻呂が海賊征伐を祝って、横笛と太鼓でこの橋を渡ったとか。

2015年3月21日    
上村 サト子    

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