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ばあちゃんロンドン記(その3)
"犬も歩けば遺跡にあたる"



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 英国人は古いものを大切にするという説は納得出来る。何処に足を踏み入れても、建物・道路・店の飾り付け・・・日本の官公庁やホテル、百貨店等のように競って新しいビルに建ち代わっていないのにさびれてないしないし、ニューファッションの洋服を着ているわけでもないのにもっさりしているわけでもない。ロンドン中マイペースで、遺跡を守り、個人を守っている。早朝のビジネスに通う人ぐらいしかロンドンっ子を感じない。それは歴史上バッキンガム宮殿やケンジントン宮殿などの英王室のあり方かも知れない。庶民も話題にしたくなるような事実や今も女王の親しみやすい笑顔と会話が報道される為であろうか。衛兵交代式や近衛兵のいるガードホースや首相官邸、ビッグベンと国会議事堂地域も一般道路に面した直ぐ側に見られる。宮殿につながるアドミラルティーアーチの下を女性二人の警察官が馬上で私語を交わしながら、緊張も無くくぐって行くし、微動だにしない衛兵に交代式のシャッターチャンスの良い場所を尋ねると、親しく教えてくれるのはいやに格式ばった日本と違う。
 すぐ近くにウェストミンスター寺院は6世紀の創建以来歴代の国王によって改築されて、ゴシック様式の荘厳な寺院になり、今では「寺院の中の寺院」の意味のThe Avey と英国人が呼ぶ。特にヘンリー8世は1634年ローマ教皇と対立し、英国国教会を成立させた変革はこの教会さえ全て名実ともに塗り替えた事であろう。何しろ離婚を許さなかったカソリックに反し、8回も結婚し8回も離婚した王だから素人には予想もつかない。クリスマスミサで途中入れなかったが、外廊はいつでも見学できる皆んなの教会である。中世以来殆どの英国王の戴冠式がこの教会で行われた。
 ロンドン搭の中央の財宝館に英国王室に伝わる数々の財宝が展示されている。兄王が継承を拒まれ、急遽戴冠式に臨まれた現エリザベスU女王の写真が記憶に残っているのは私のような世代からではなかろうか。王冠にはまばゆいばかりの2800以上のダイヤ、王笏には530カラットの世界最大のダイヤ「アフリカの星」がはめ込まれている。金糸銀糸の刺?の重々しいガウンは肩から裾まである。この王冠と王笏のショーウインドウの両側に見学のためのベルトコンべァーがついている。次の戴冠式にこの装束を身につけられる方はどなたであろうとも、重責と重量感に同情を持ってテレビを見る事だろう。本来ロンドン搭は11世紀、砦に築かれたが、歴代の国王によって拡張が繰り返され、城とも牢獄とも罪人処刑の場ともなった。外壁にあるひとつの搭は600年以上当時として珍しい動物が飼われていた。世界を制覇した歴代の国王の驕りの象徴、ライオン・豹・大蛇・猿類・白熊・・・、白熊に至っては紐を付けられ、毎日5時間テムズ河で運動と魚捕獲に兵士が付いていた。何時の頃かわからないがロンドン動物園開設時、動物は移されたらしい。動物愛護を唱える英国にこんな汚点があったのかと動物に哀れを感じ、外に出るとロンドンブリッジの景勝が見えたのでほっとした。

2015年1月28日    
上村 サト子    

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