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東京下町ぶらある記 その1東京下町ぶらある記 その3


東京下町ぶらある記 その2
"日暮里・朝倉彫塑館と谷中(やなか)銀座界隈"



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 さすが東北大地震を経験した東京台東区である。交通機関の要所要所に帰宅困難者用支援マップが置いてある。上野を基点とした地図の上に1k単位で輪が示され、支援一覧表が載っている。今日行く所は2k範囲内、JR山手線日暮里駅下車、歩いて5分。途中煎餅店や鯛焼き店、佃煮店に列をなしている。東京人はおいしいと評判になった店には大抵列をなすものらしい。私もお上りさん気分で列に加わり、土産用に買っていたので、目的地の朝倉彫塑館になかなか届かない。
 朝倉彫塑館は昭和23文化勲章を授賞した朝倉文夫氏の業績を顕彰する為に自宅続きに建てられた。同氏(1883〜1964)は生涯を通して多くの肖像・彫刻を制作した。東京美術学校(現芸大)を卒業するまでに1000体以上制作したというから、その偉業は計り知れない。代表作は滝廉太郎像、大隈重信像、墓守、父と母の像、進化、猫・・・等など没後50年になるが、その観察力と技術は今でも類を見ないほどとの評価を得ているらしい。
娘は舞台芸術家の故朝倉摂さんと彫刻家朝倉響子さんというから才能ある一家が羨ましい。創始者の朝倉文夫氏は自宅続きの工房で多くの塾生を育成した。実物を観察する事を旨としたので、屋上に当時第一号となった庭園を作り、野菜や花を植えられ、庭一面には池をつくり、見事な庭石を配した中に美しい緋鯉が泳いでいる。全て教材になった。本人も猫をこよなく愛し、一時12−13匹も飼っていて、その彫像は生きているようである。屋上に植えられたオリーブの木は今では3mを越える程になっている。眼下には徳川時代から有名な谷中(やなか)墓地、遠くにはスカイツリーが霞んで見える。
 一瞬芸術愛好家になったような気分で建物を出ると、行きと同じ下町っぽい気分にすぐ浸ってしまう町中である。アーケード上に谷中銀座と書いてある。寺と坂のある町として親しまれるだけあって、JR千駄木駅まで心地よい下りである。両側にぎっしりと雑貨店、スイーツの店、丼物、喫茶店など気取らない風情の店が続き、床几やベンチで客が休んでいる。商店街の人達も町おこしに頑張っているなという感じが伝わってくる。今日も大阪のおばちゃん風情で過ごせた良い町並みであった。

2014年12月6日    
上村 サト子    

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