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熊野古道伊勢路"馬も越せない馬越(まごせ)峠"


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 ツアー5回目は"ごんべが種まきゃカラスがまぜくる♪"で知られる種蒔きごんべさんゆかりの海山(みやま)道の駅からスタート。この地域は年間4000mlを越える豪雨地帯の尾鷲、尾鷲と言えば気象情報に必ず出てくると言っていいくらいの所です。最初の予定が7月11日で、台風8号の為順延になり、18日となった。案の定記録的な豪雨であったそうだ。古来よりこの雨が幸いして檜・杉・樫・椎など立派な材木を産出できた。熊野古道は巡礼者の為のものではあったが、また大切な材木搬出の道でもあった。石畳の石がすり減って居るのはそのせいである。
 世界遺産の標識からすぐ石畳が始まる。土砂の流出や崩落を防ぐため石と石の隙間が殆どないように敷き詰められ、その石群が崩れないよう所々に大きな親石が配置されている。その美しさの中に生活の厳しさが感じられる石畳が2kも続いたろうか、ホッとした所に"夜泣き地蔵"が鎮座している。もともと旅の安全を祈願するために祀られたものが、何時のころからか夜泣き封じと信じられるようになった地蔵さまとか、私は我が子・孫にはお祈りも必要なくなったが、まだ幼い孫を持つ義妹に手を合わせるよう勧める。雨の日山道の下を横切る川は橋をも流す勢いなのか大きい1枚の岩で橋を作ってある。道の両脇にはさすが立派な檜や杉が立ち並ぶ。その樹木の木漏れ陽を受け、美しくシダ類が群生している。ハナミョウガも大きな葉を広げている。真中の青い実が秋には真っ赤に色づき、美しく彩どるらしい。旅人にはこの実を口にして、清涼剤のような味わい方をしたらしい。眞横に伸びた枝に鈎が出たかずらは名のごとく"かぎかずら"という。曲がった鈎状の棘は1対と単生と交互についていて、他の植物に絡みやすく出来ている。鈎と茎を乾燥させて、鎮痛の漢方生薬となるらしい。
 頂上の馬越峠は325mで、今日のコースは高低差が少ないと安心していたが暑さは抜群、よくこれだけ汗が流れるものだと我ながら感心する。昔、荷車を引いた旅人は分解した荷車と荷物を強力(ごうりき)に頼んで峠を越えたそうな。峠を越えても石畳だが、道が乾いていたので滑る事は少なかった。今回のコースの満願場所は町石22/22の馬越峠公園。一息ついて脇道に入ると馬越不動滝と岩肌に不動明王の祠があり、誰もリタイアすることなく、私も無事であったことに感謝して手を合わせる。昨年の5月に植樹祭に来られた皇太子殿下はこの古道を1時間半で歩かれたらしいが私達は2時間半もかかった。
 マイナスイオンを体中にたっぷり受けて足取りも軽く、バスが待っている尾鷲駅までひたすら歩く。途中に立ち寄った尾鷲神社の2本の大楠は周囲10mと9m、樹齢1千年を超えると推定され、県の天然記念物に指定された見事なものである。「夫婦楠」とも呼ばれ、夫婦円満、子宝授け、良縁結びの神木と親しまれていると参拝のしおりにあるが、少子化・晩婚の現代にせいぜい御利益を願い、お賽銭と朱印帳記帳して頂いている内にすっかり一行に遅れた。 

2014年7月26日    
上村 サト子    


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