初夏の竹林を見ていると心身共にさわやかさを感じる。それは美しい浅緑色だろうか、しなやかな姿だろうかそれともその成長の早さに感嘆するからだろうか、いや筍の味も旬そのものの美味、だって筍はたけかんむりに旬と書くんですから。竹は古来から子どもの成長に重ね合わせて、歌や俳句に詠まれてきた。竹の生長帯は節ごとにあり、一斉にのびる。その節は根茎から地上に新芽を出す前の筍の時から多くの節を持ち、節ごとでぐんぐん生長し、伸びるスピードでは植物随一で、節が多いほどしなやかで強い竹になるという。人間の一生に譬えられ、試練・挫折・成長、時には"筍生活"とも譬えられる事がある。
3月末から5月中旬まで楽しめるのは孟宗竹の筍で、一番量も多く、本州以南に広く見られる。4月末、ベストシーズンを目指して茨城県土浦市近くの弟宅に出かけた。裏庭が300坪くらいの竹やぶがあり、家の近くまで筍が顔を出している。まずは弟から筍の掘り方のレクチャーを受ける。いよいよ筍掘り用の縦に長いスコップを持って掘りはじめる。これがなかなか力の要るもの。最初は体力を考えて2−3本で十分と思いながら、欲にかられてあそこにもここにもと気がつけばリヤカー一杯になっていた。弟は横でドラム缶二つを繋いだストーブに竹をボンボン放り込んで燃やし、バーベキューに使う竹炭を作っている。この日の昼食は筍づくし、筍のさしみ、焼き筍、筍の天ぷら、筍の味噌汁、筍入りやきそばと筍の醍醐味と贅沢な竹炭を使ったバーベキューを味わった。
この弟の趣味は竹のご縁から竹トンボ作りと指導である。お声が掛かれば日本中どころか世界にも飛んでいくのである。この日も90cmくらいの竹トンボをとばしてくれた。材質は竹だけでなくアルミ、木材、しゃもじ、うちわなどアイディアが広がる。すべて人力である。以前2m近くの物をとばしてテレビ局が取材に来たが、今では体力が落ち無理と言う。ここは成田空港に続く高速道路は延びつつあるが、通過点で、周囲は過疎化が進み、隣近所は殆どない。路線バスは減らされ、高校は閉校になり、自動車がなければ生活しにくくなっている。しかしセブンイレブンが大きい駐車場を持ち、若者から老人まで買い物に来て、重宝している様子だ。
最後に皆で竹トンボ大会をした。誰のが一番飛んだかわからない。筍のように生長した大人が童のような表情をして真剣そのものだった。
たけとんぼ
とんだ〜やねまでとんだ〜
やねまでとんで かくれてきえた〜
かぜかぜふいて たけとんぼ もどして♪
2014年5月20日
上村 サト子
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