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京都南部の世界遺産を訪ねて
(その一)静寂の地に権力と戦乱とロマンが渦巻いた



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 消費税値上げの前日に見頃の枝垂れ桜見物に出かけた。
JR山科から京都地下鉄東西線に乗り換えて小野駅で降りる。まずは歩いて15分、勧修寺に着く。目的の枝垂れ桜は7分咲き。早かったかと少し気落ちするがこのお寺は桜がご自慢ではない。その寺伝とお庭である。創建は西暦900年醍醐天皇の生母藤原胤子追善の為だった。その後平安時代から数々の戦乱に巻き込まれ、全く荒廃していたが徳川氏や皇室の援助により復興された。"氷室の池"を中心に宸殿、書院、本堂、庭園が物静かに立ち並ぶ。毎年一月二日に張った氷を五穀豊穣の祈願とし、宮中に献上していたらしい。庭園に珍しいものが二つ。その一つ、「ハイビャクシン」というヒノキ科の匍匐性の常緑灌木が20畳敷くらいの広さの低地に広がっている。樹齢750年と言われるが根はさっぱり判らない。もう一つはその茂みの中にユニークな形の灯籠が立っている。「勧修寺型燈籠」で水戸光圀公の寄進と伝わる。水戸黄門が笠を被って、茂みよりじっと眺められているような気がしてくる。
 小野駅に戻り、東西線の北に出て随心院に立ち寄る。門跡寺院として代々皇族や摂関家出身者が住職となった由緒ある寺で、立派な置物や襖絵などがある。この一帯は小野一族が栄えた場所で、有名なのは小野小町だ。竹やぶの中に彼女が毎日使っていたと言われる「化粧の井戸」や深草少将をはじめ小町を慕う男たちの通った小道がある。この寺の梅林で観梅会と「はねず踊り」が催される。ここの梅は少し濃い色で、日本語に「はねず色」(唐棣色)という言葉がある事を知った。

2014年4月23日    
     上村 サト子    


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