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西への歴史街道
〜旧きを訪ね、新しきを知る〜
【その2 岡山県東南部編】



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 赤穂を過ぎて日生(ひなせ)に入るとカーナビは岡山に入りましたと知らせてくれる。日生より地道を北に約8キロ走って山陽自動車道をくぐると、旧閑谷(しずたに) 学校が突然現われる。備前の藩主池田光政公が1670年に庶民も武士も共に学ぶ為に建設を命じた世界最古の庶民の為の学校である。この清閑さが漂う雰囲気の中、ピカピカに磨かれた講堂の縁先に座って居ると論語朗誦の声が聞こえてくるような気がする。
山際には光政公を祀る閑谷神社や孔子像を祀る聖廟があり、その前に大正4年、中国の曲阜にある孔子墓より種を持ち帰って育てた2本の楷の木が秋には見事に紅葉するとある。儒学の祖である孔子にちなんで「学問の木」と呼ばれているとか、親戚の受験生に持たせて御利益を頂きたいと社務所で楷の葉のしおりを買い求めた。これ等の堅固な壮麗な国宝の諸々の建築物は備前焼の瓦で葺いてあり、楚々として建ち並ぶ。藩主の心構えを伺える佇まいである。またそれらを取り囲む765mの石塀の見事さ、堅実さ、精巧さは他に較べようがない。石組みは「切り込みはぎ式」中は砂・小石で詰め、水はけがよく、草が生えないらしい。学校の前の茶店で醤油味のソフトクリームで元気さをもらい、さらに岡山市内に向けて車を走らせた。
 吉備津神社に入る手前で遂に渋滞に巻き込まれた。でもその甲斐あってライトアップされた神殿は思い出に残る神々しい立派な建物である。この神社には360mの長い長い回廊の奥に鳴釜(なるかま)神事を行う神殿がある。上田秋成の「雨月物語」に玄米を蒸して釜の鳴る音で吉凶を占う神事があるが今も続いている。主祭神の大吉備津彦命は桃太郎のモデルともいわれ、小4の孫に説明しやすかった。この本殿も拝殿も国宝である。
 岡山県は海岸の良さあり、高原の良さあり、歴史を味わえる構築物あり、芸術を鑑賞出来る街あり、グルメも楽しめる素晴らしい所である。お正月で休館の多い中、国宝の建物や仏像を見せてもらって、お年玉を貰った様な気分である。さらに車を広島県に進めた長い1日であった。

2014-2-1    
上村 サト子    


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