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お池にはまって さあ大変


写真にカーソルを乗せたり、放してして見て下さい。

 6月の乗鞍高原はまだオフシーズンで観光客はほとんどいない。大自然の景色と源泉かけ流しの温泉を楽しみたくてドライブ旅行に出た。
前日の雨も上がり、清冽な空気に満ちた森の中の木道を歩いて行くと、「牛留池」に着いた。
溶岩台地のくぼ地にできた小さな池は周囲の木立を映して美しい。幹が円形に変形した木や緑に混じる白樺の白い幹の色も目を引いた。
カメラを抱え木々の間から見える池を狙って、木道からちょっとはずれた地面に踏み込んだところ、底がなかった。
地面に見えて地面ではなく森に降った雨をたっぷり溜め込んだ湿地だったのだ。
踏ん張るところも掴まるものもなくて、横倒しに転んでカメラもろとも湿地の中にはまってしまった。
大声を出して夫を呼んだ。
引っ張り上げてもらって立ち上がったのはよかったが、木屑を含んだ泥水で全身泥だらけ。
水を含んだ衣服のなんと重いこと。
一生に一度あるかないかのシャッターチャンスだったのにそれどころではなかったと笑い合った。ハンカチでカメラの汚れをふき取ったが作動しなかった。
どうしようもなくて連泊しているホテルに戻ることにした。
車を汚すからどこも触るなと言われて、後部座席に敷き詰めたブルーシートの真ん中に座った。
ホテルの庭の散水ホースで全身水をかぶって汚れを落としてから、やっと温泉に浸かることができた。
乳白色のお湯で体の芯まで温まり気持ちがよかった。
ホテルの若い女性スタッフが「忘れられない思い出になりますね。」と笑った。
そうなると気がかりは作動しなかったカメラのこと。
しばらくするとスイッチは入るもののレンズ装着不可の警告マークが出て、シャッターが下りない。
「本人が怪我したわけでもない。カメラは修理したら元に戻る」と言われ、まっ、それはそうだと納得した。
   2013-6-30
記 内泉 早苗  

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