「えべっさん」から半月も過ぎて、どこかに落とし福とか、忘れ福が残っていないかと京都の今宮神社へ出かけました。
大阪人の感覚で今宮神社といえば、「えべっさん」かと思っていたのですが、とんでもない、商売の神様ではありません。京都の人に怒られそうです。
平安建都以前から疫病を祀る社があったといわれ、平安京が出来てから、打ち続く疫病や災厄に悩まされ、各地で盛んに御霊会(ごりょうえ)が営まれました。
その一つが、一条天皇の時代に当地の疫神を二基の神輿に込めて、船岡山に安置し、神慮を慰め奉って悪疫退散を祈ったことが、紫野御霊会であり、今宮祭の起源だということです。
この神社には有名なお守りがあります。「玉の輿守」といって、徳川五代将軍綱吉の生母、桂昌院(お玉、西陣出身)の出世にあやかろうと言うお守りです。
桂昌院の崇敬は西陣への愛郷心とともに篤く、荒廃していた社殿の造営などを行いました。明治29年、社殿を焼失しましたが、同35年再建されました。
この神社の東門入り口に、有名な「あぶり餅」の店があります。なんと二軒の店が向かい合って、同じ商品を同じ値段で商っているのです。一方は創業1000年、一方は400年だそうです。
「かざり屋」と「一和(一文字屋)」です。一説には、中が悪いとか(そりゃあそうでしょうね。でもそうでないと言う説もあります)、小さなお餅を細い串にさし、火にあぶって焦げ目を付け、白味噌の餡をかけたものです。さて、どちらの店に入ろうか迷いましたが、二軒のうち少し神社に近い方に足を運びました。まずお茶が出て、間もなく「あぶり餅」が出されます。やわらかいお餅に白味噌の甘さがおいしかった。でも向かいの店の味はどうなんだろう。お餅を焼いているところの写真を撮らせてもらってから、ちょっとためらったけど、思い切って向かいの店に入りました。実を言うと、そのつもりでお昼を抜いてきたのです。
二軒目も同じ手順です。店の造作も雰囲気もほとんど同じです。何百年もこうして続くなんて私には、おそらく多くの人も考えらルない、そう思われるでしょう。それが私が今まで感じてきた「京都人」なのだろうと勝手に納得しました。どちらが美味しかったって?
それはご自分で試されることをお勧めします。両方に入るのはちょっと勇気がいりますけど。
記 牧戸 富美子
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