会員便り
目次 へ|戻る次へ

特別展古代エジプト文明3000年の世界
古代エジプト精神世界の旅
「死」と「再生」、「王権」と「神」
(その 2/3)

古代エジプト人が考えた魂
古代エジプト人は、肉体のほかに3種類の魂が存在すると考えていました。
それらは古代エジプト語でカー、バー、アクと呼ばれています。
カーは、人間の影のような分身であり、常に人間と重なり合って存在しているものです。生前の肉体が魂を入れておく器だとすれば、カーはその器に入って人間の生命力や人格であるといえるでしょう。肉体が「死」を迎えても、その人のカーは遺体と一緒に生き続けるので、そのために今度は魂を別の形態であるバーが墓内のカーのために供物を供給する役割を担うのです。
バーは人間の活動的な力を現しているため、しばしば人頭に鳥の体として描写されています。
カーは墓室から飛び出して、その世とこの世を行き来することができ、供え物を受け取ったり、町に出かけて見聞を広めたりすることも出来ました。
アクは死者が冥界に「祝福された者」として受け入れられたときにとる光輝く形で、アクに変容した後の死者は永遠に不滅と考えられました。


「死」は万物に訪れます。古代エジプト人は生き物にとって不可避である「死」をどにようにとらえたのでしょうか?。
 古代エジプト人は、「死」をあの世で甦りを果たすための通過点であると認識していたようです。
死者のあの世の神オシリスに受け入れられた後、「輝ける魂」として再生を果たすと考えていました。そのためは死後も自らの肉体を保存し、魂の拠代を確保しておく必要が有りました。このような目的のために古代エジプト人はミイラ作りをはじめ、ミイラを納める棺や、死者が暮らす墓の準備、そしてあの世で生活するために生活必需品を墓に副葬したのです。
再生(豊穣)
エジプトに恩恵をもたらすナイル河は一年に一度、4lケ月ほど増水し、水が海岸の畑を潤します。水が引いた後の肥沃な黒土からは、植物が緑の生き吹きを復活させ、再び実りある収穫へと導きます。このように毎年繰り返されるナイル河のの増水と、毎日繰り返される日の出と日没などを観察することによって、古代エジプト人は、人間を含めた全てのものが自然のサイクルに従って再生を繰り返すと考えるようになりました。
 したがって、死者はあの世での再生を祈願するために、命をはぐくむ色である青や青緑色の護符を呪物として身につけたのです。
「再生(豊穣)」と大きく関わるのが子どもを生む女性の装身具や持ち物には豊穣を祈願する意匠が多く用いられました。