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ご挨拶
鋳物研究室創立50周年、恩師 武智先生を偲び、語る会


                 故 武智馨先生を「語る会」実行委員
                   「語る会」顧問代表
                   かおる会 2期
                   木 子  房 二 郎

 昭和30年(1955年)卒業の木子です。
本日は、鋳物研究室創立50周年、武智先生を偲び、語る会に、お忙しい中、先生のご家族の皆様はじめ、来賓の皆様、会員各位、多数ご出席頂き有難うございます。
そして、開催の段取りをして下さった会長はじめ幹事の方々に、厚く御礼申しあげます。
来賓の皆様には、数十年ぶりにお目にかかり、皆様のご壮健なお姿に接し、大変懐かしく嬉しく思います。

 さて、鋳物研究室は、創立50周年にあたりますが、先生のご指導を得て巣立った学生は、25期生、200数十人にも及び、各界で活躍する人材を育てて頂きました。
現在、研究室は、先生のご退任と共に存続されてはいませんが、昭和34年発足した 「かおる会」は、先生の協力共栄のご意志を体し、歴代幹事、会員各位のご努力により、連綿として継続されていることは、他に例を見ないものであり、如何に先生のご指導、ご教訓が、会員皆様の心に残っているかを物語っているものと思います。
 さて、顧みますと、私が、工大に入学したのが昭和26年(1951年)ですから アッと言う間に52年が過ぎ去った感じがします。
 始めて、先生にお目にかかったのは昭和27年、先生が工大の教授に就任された時でした。当時、国友先生から研究室補助員のお話があり、面接を受けました。当時は、終戦後、数年を経たばかりで、先生の帝国海軍の技術将官としての毅然としたお姿、威厳にオーラーを感じ、身の引き締まる思いがし、大変緊張したのを憶えています。学生の礼儀作法もいろいろとご指導されました。例えば、会合5分前集合厳守、面接の態度など、社会に出てから思い起こし反省の連続で、所詮、不肖の弟子で終わりそうです。卒業後も助手として一年、都合、四年間ご指導賜り大変お世話になりました。厳しいご指導の中にも、親身にお心くばりを頂き、今日あるのは、先生のお蔭と感謝しております。戦後の混乱の中、学生の教育に腐心される一方、海軍の卓越した技術の散逸を懸念され、元海軍工廠技術者の就職先、家庭の問題まで面倒を見られ、頭の下がる思いがしました。 先生は、戦時中の技術開発の代表的なものとして、戦艦大和のスクリューの製作、万国軍縮の最中、ドイツから大和主砲の鍛造プレスの導入など壮絶な技術開発(Project-X)について、よく話されました。それらが、戦後、日本の産業の発展に寄与した多くの技術的遺産として残されました。先生が、世界一と自負された海軍鋳物実験部が、終戦で完全に姿を消した空しさ、寂しさは如何ばかりであったかと拝察されますが、後に、第一の人生は、有形、かたちのあるものを追求したが、第二の人生は、無形のもの、即ち、教育にかけられた人生を幸福に思うと述懐されておられます。
 皆さんは、昭和50年(1975年)先生の喜寿のお祝いで、直筆のと書かれた色紙を戴いたのをご記憶の事と思います。この意味は、思いやりの心だそうですが、先生は、恕の精神をもってすれば、いたるところ、常に春風駘蕩、和平安穏、対立とか波乱は起こらないと説いておられます。今、国連憲章に入れたい言葉ですね。
 私は、今年(平成15年)3月で古稀を迎えました。先生が70歳を迎えられ時どのようなお考えであったのか、会報を紐解きますと「住は、雨露を凌げば足り、衣食は寒さ、飢えを凌げば足る」と書かれ、まさに、質実剛健の生涯を貫かれました。とても凡人には真似が出来ることではありません。 時に厳しく、時に親身に、そのご薫陶は、私どもの心にいつまでも深く残っていくと思います。今も尚、細身の蝙蝠傘をステッキに、英国紳士の身嗜みと、帝国海軍の技術を背負って立った武将の気概と威厳を保ち、学生への自愛に満ちた眼差しでゆったりと歩いておられたお姿、そして、本日、ご来賓の枝元さんからの大阪市委嘱の鋳物砂実地踏査では、「古川君、木子君、"マムシは、おらんかのう"」とステッキで草を払いながら山路の先頭を歩かれるお姿が、彷彿としてよみがえってまいります。皆さんも、それぞれに、先生の面影を偲んでおられることと思います。
 さて、残された人生、喜寿に下さった言葉、「恕」など、数々のご薫陶に万分の一でも お応え出来るよう日々、反省と自戒をしながら、これからの人生を過ごして行きたいと 思います。

 最後になりますが、本日、お集まりの皆様、どうぞ、ご健康に留意され、また、いつの 日かお目にかかれますよう、そして、かおる会の末永い存続を祈念し、50周年にあたり 先生を偲ぶ言葉と致します。
 ありがとうございました。


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